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「好きなんでしょ?潤くんの事」
その形相とは裏腹に、一応周りを気遣いながら小声で言う亜沙美。
「ないよ。潤は弟みたいなものだから」
亜沙美の手を退かしてそう言うと、私はそのままお弁当箱のフタを閉める。
「だけど、弟じゃないじゃん」
不満そうに言う亜沙美に「担任に呼ばれてるから」と告げると席を立った。
一人歩く廊下の陽射しがリノリウムの床に反射して、制服のブレザーに熱をもたらす。
もう春が近付いているんだなと、何故か切なさが込み上げた。
明日から、私達3年生は自由登校になる。
指定校推薦をもらえた私は、同級生より一足早く進学先を決めていた。
後は卒業を待つだけだ。
楽しい3年間だった、と思う。
思い残す事は何も……無い。
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