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「あ、失礼」
そう言って口元を手の甲で覆っているのは、数学の高遠治先生だ。
「……高遠先生?今笑いましたよね!?」
「いえ?気のせいじゃないですか?」
笑ったくせにしれっとそう言う高遠先生にびっくりしたが、矛先がそちらに向かった事にホッとして、早く課題をもらって教室に帰ろうとした。
「ゆっこちゃん、課題は?」
「ああ、そうだった。ごめんごめん」
あっさり高遠先生を放って再び机に向かうゆっこちゃんに、思わず高遠先生と目を合わせて苦笑いがこぼれた。
ゆっこちゃんみたいにサッパリした性格だったらどんなに良かっただろうかと思う。
ゆっこちゃんにだって悩みはあるだろうが(結婚出来ないとか?)、普段、それをおくびにも出さない性格と笑顔は凄く見習いたいと思うし、憧れていた部分でもあった。
私なんか、勇気がなくて仕舞い込んでるクセに見破られて心配掛けて……。
その上、気付いてもらえていた事を嬉しく感じているなんて、自分のワガママに辟易する。
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