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「どうされましたか?」
歯切れが悪い。
わざわざ部屋までやって来た局長は珍しく難しい顔で私の目の前に座っている。
「君は…どう思う。」
「何がですか?」
「…伊東先生の事だ。」
何故それを私に…普通、副長にするだろう…
「伊東先生は、俺達と思想が若干違う。だが、あの人は素晴らしい方だ。」
「このような事、言うべきではないのかもしれませんが…」
「遠慮せずに言ってくれ。」
私が口を開くのがこの男のためになるだろう…
「上に立つ者は、捨てる度量がいります。局長、貴方にはそれがない。」
「捨てる度量…」
この人は優しすぎる。
「組織の中において汚れは広がりやすい。それを落とすのが遅くなると、汚れは全体を染め侵食する。そうなれば手遅れです。」
もはや…手遅れかもしれないが…
「局長が上に立っている自覚があるのなら…下に任せず決断するべきです。」
でないと…失うものが更に増える…
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