笹川 やよい

2/2
前へ
/18ページ
次へ
「私は毎日幸せ。こうちゃんがいれば何にもいらない」 「やっちゃん、それ、何て言うか教えてあげようか。『重い』」 ポッキーを貪りながら桜は言った。 「まぁ、それだけ好きっていいことじゃない?」 「そうだよ。桜、抑えて抑えて」 これまたポッキーをかじりながら仁藤ちゃんと加奈が桜をなだめた。 「何よぉ。皆してリア充しちゃって」 桜はうらめしそうに三人を見る。 「でもさぁ、やっちゃん、前の彼氏の時もそんなこと言ってなかった?たっくんだっけ」 仁藤ちゃんと加奈はお互いの顔を見合わせて苦笑した。 「しょうがないよ。だって私、恋愛体質だもん」 そう、私は常に『彼氏』がいないと生きていけない恋愛体質なのだ。 今付き合っている石坂康介は11人目、高校に入ってからは7人目の彼氏。 だけど、こうちゃんは今までの『彼氏』とは違う。 こうちゃんは唯一、私から告白して付き合った男の子なんだ。 「あんな男のどこがいいのかねぇ」 桜は口を尖らせて呟いた。 こうちゃんは女子からの評判が悪い。 1組の優衣ちゃんとか3組の真梨子とか、とにかく色んな人との噂があって、大抵それらの噂はすべて真実だから。 だけど、私はちっとも気にしない。 もちろんヤキモチは妬くけど、私は絶対に別れてなんかあげない。 だってそんなことしたら、あの子たちに私のこうちゃんを奪われちゃうもん。 「何よ、桜。こうちゃんの話ばっかりして、まさかこうちゃんのこと好きになったの!?」 「そんなわけないでしょ!」 桜はため息をつきながら仁藤ちゃんを連れてトイレに行った。 「…やっちゃん、石坂くんとはうまくいってるの?」 「最近はね」 「じゃあ腕を見せて」 「…嫌」 加奈は黙ったまま、私のブレザーの袖を軽く捲った。 「嘘つかないでよ」 私の腕には、こうちゃんが噛んだ痕がたくさんある。 「もう別れなって」 「嫌よ。絶対に別れない」 こうちゃんはエッチのときに私の腕や脚を噛むし、髪をひっぱるときもある。 浮気癖だってきっと直らないし、いらいらしているときに怒鳴ったりするし、本当にどうしよもない男だ。 それでも、私はこうちゃんを嫌いになれない。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加