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「私は毎日幸せ。こうちゃんがいれば何にもいらない」
「やっちゃん、それ、何て言うか教えてあげようか。『重い』」
ポッキーを貪りながら桜は言った。
「まぁ、それだけ好きっていいことじゃない?」
「そうだよ。桜、抑えて抑えて」
これまたポッキーをかじりながら仁藤ちゃんと加奈が桜をなだめた。
「何よぉ。皆してリア充しちゃって」
桜はうらめしそうに三人を見る。
「でもさぁ、やっちゃん、前の彼氏の時もそんなこと言ってなかった?たっくんだっけ」
仁藤ちゃんと加奈はお互いの顔を見合わせて苦笑した。
「しょうがないよ。だって私、恋愛体質だもん」
そう、私は常に『彼氏』がいないと生きていけない恋愛体質なのだ。
今付き合っている石坂康介は11人目、高校に入ってからは7人目の彼氏。
だけど、こうちゃんは今までの『彼氏』とは違う。
こうちゃんは唯一、私から告白して付き合った男の子なんだ。
「あんな男のどこがいいのかねぇ」
桜は口を尖らせて呟いた。
こうちゃんは女子からの評判が悪い。
1組の優衣ちゃんとか3組の真梨子とか、とにかく色んな人との噂があって、大抵それらの噂はすべて真実だから。
だけど、私はちっとも気にしない。
もちろんヤキモチは妬くけど、私は絶対に別れてなんかあげない。
だってそんなことしたら、あの子たちに私のこうちゃんを奪われちゃうもん。
「何よ、桜。こうちゃんの話ばっかりして、まさかこうちゃんのこと好きになったの!?」
「そんなわけないでしょ!」
桜はため息をつきながら仁藤ちゃんを連れてトイレに行った。
「…やっちゃん、石坂くんとはうまくいってるの?」
「最近はね」
「じゃあ腕を見せて」
「…嫌」
加奈は黙ったまま、私のブレザーの袖を軽く捲った。
「嘘つかないでよ」
私の腕には、こうちゃんが噛んだ痕がたくさんある。
「もう別れなって」
「嫌よ。絶対に別れない」
こうちゃんはエッチのときに私の腕や脚を噛むし、髪をひっぱるときもある。
浮気癖だってきっと直らないし、いらいらしているときに怒鳴ったりするし、本当にどうしよもない男だ。
それでも、私はこうちゃんを嫌いになれない。
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