木村 浩史

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高校三年生にして、人生で二人目の彼女ができた。 とは言っても、一人目なんてたったの一ヶ月で自然消滅だったから、いないに等しいんだけど。 仁藤 愛は彼氏である俺の贔屓目とかじゃなく、本当に完璧だと思う。 成績は学年二位で、でも高飛車になんかならず、誰からも好かれる明るく面白い性格。 背は145センチと低めだが、胸が大きいのに細身でスタイルは抜群にいい。 目鼻立ちは薄いほうで、美人というよりは癒し系かな。 本人は「料理や歌が苦手。しっかりしてそうに見えて、よくドジをする」自分があまり好きではないらしいが、俺は大好きだ。 三年生になるまでは、仁藤 愛という名前は知っていたものの実際に見たことはなかった。 男子がよく「仁藤さん」の話をしていたが、俺は恋愛には興味がなかった。 それが変わったのが、去年の四月。 新しく三年五組の生徒となって、本当の彼女をはじめて見た。 俺だけのものにしたいと思った。 これが恋なんだな、と思った。 俺はバカだけど、ノリは悪くないから友達は多い。 だから友達に相談しまくって、仁藤さんと同じ学級委員に立候補したんだ。 仁藤さんは男子と話すのが苦手だったらしく、俺が話しかけてもいつも返事はそっけなかった。 でも俺はバカだから、そんなことじゃへこたれなかった そんな俺に運がめぐってきたのは、夏休みに入る前日の放課後だった。 俺は隣のクラスの石坂と教室で話していた。 そして委員会を終えた佐々木が幸せそうな笑顔で教室に帰ってきて、「こうちゃん」を連れてそそくさと帰宅してしまうもんだから、俺は広くもなく狭くもない教室にひとりぼっちになった。 そろそろ帰ろうかなんて思っていると、ガラリと教室の戸が開いた。 そこに立っていたのは仁藤さんで、俺が驚いて呆然としているのをちらりと一瞥して、何も言わずに自分の席について勉強を始めた。 このチャンスは逃してはいけない。 俺の中の俺が囁いた。 「仁藤さん、帰らないの?」 「…桜ちゃんを待ってるの」 「ふーん」 「木村くんは?」 「俺も友達待ち」 「そうなんだ」 仁藤さんは男子と話すのに慣れていないから、なんだか落ち着かないようだった。 シャープペンを持つ手は全く動いていない。 「仁藤さんさ、誰かと付き合ったことある?」 「えっ、ないけど…。いきなり何?」 「ないんだ、意外」 「私、モテないもん」
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