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話をしていると入口から出てくるカップル。
先ほどのカップルだったようだ。
「あ、またあった」
同僚が笑っていうと笑いながら近づいてくる。
その笑顔に思わず心臓が跳ねる。
「何してんの」
「いや、送ってくっていってるのに断られてるの」
「だって、反対方向だし」
まだ言い続けるとふと視線がぶつかる。
「家、どっち?」
「あっち」
そう言って指差すと納得したように頷く。
「完全反対方向だな」
「だからってさ」
「じゃぁ、お前こいつ送って」
「ん?」
そう言って斜め後ろに立っていた彼女を同僚に押し付けるように背中を押した。
「え?」
「方向同じだから。おんなじ方向を送ってけばいいだろ。俺こっちだし」
そう言って同じ方向を指す。
「…送ってくれるならいいけど」
「んじゃな」
そう言うと歩き出す。
「送ってく。おいで」
「あ、でも」
「何度も口論する気はない」
「あ、じゃぁ…お願いします」
そう言って後を追いかけた。
止まっていたタクシーに乗る彼に続いて乗ると行き先を告げる彼。
タクシーが走り出すとふと見つめられる。
「どの辺?」
「あ、ほぼ同じです」
「そう」
そう言うとあくびをする彼。
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