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「あの…良かったんですか?」
「何が」
「彼女さん、送っていかなくて」
「別に。勝手に帰るだろうし」
「…」
「デートじゃねぇし。送る義理もない」
「…」
「その点アイツはえらいよな」
「あいつ?あぁ。」
誰のことか一瞬わからないがすぐに同僚のことだとわかる。
「人が好きみたいですからね。あの人は」
「まぁな。」
そう言うとしばらく無言が続く。
タクシーが止まるとお金を支払い降りる彼に続く。
タクシーが走り出すとバッグから財布を出し半分渡す。
「いらね」
「でも」
「それより、家どっち?」
「え?」
「どっち?」
「あ、あっち」
指差すと歩き出す。
「あっ…お金」
「だから、いらねぇって。たまたま同じ方向だったから乗せただけ」
「…。それでも!受け取ってください。」
歩き出した彼の前に回り込むとその手に無理にお金を乗せる。
「っ!…変な奴」
そう言って笑い出す。
「変でもいいです。初めて会ったのにそんな図々しいことできませんから」
そう言って歩き出した。
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