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その日、警務部長から呼ばれたのは、警務課人事管理官の“板付桃太郎”警視。博多県警察官の誰もが認める超エリートの44歳。
板付桃太郎は博多県“神の島”生まれ。彼の誕生に関しては、今もなお島民に伝えられし“島伝説”がある。
母は島一番と言われる海女だったが、桃太郎出産の際に陣痛が始まるや否や、血圧が急上昇して一時的に失神した。
自宅に駆け付けた産婆が、眠り続ける母体から男の子を取り上げたのだが……。
生まれた赤ん坊の全身は白い産毛に覆われ、産婆も驚いて腰を抜かすほどだったという。
赤ん坊の柔らかな尻の膨らみは色鮮やかにピンクに染まり、白い産毛とのコントラストは、まるで“大きな桃”だったそうな。
そして、眠ったまま赤ん坊を出産した母。
彼女が深い眠りの中で夢見たもの。
それは“おとぎ話の桃太郎”であった。
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