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──黄色だ。
目を見開いて、足を止める。初めて踏み入ったこの世界の街は、──黄色の街だった。
建ち並ぶ家々は、全て、黄色い石のようなもので出来ていたのだ。道に敷き詰められているものも、いつの間にか赤みがかった煉瓦から黄色の石畳へと変化していた。
黄色い街を行き交う人々も、黄色みがかった衣服を身に纏っている者が多い。その黄色というのも、黄ばんだような色合いではなく、鮮やかな目が覚めるような黄色だ。
「すごい……」
口から勝手に言葉がこぼれ落ちた。黄色い家々、笑い合う人々、駆け回る子供たち、家の前で眠る猫、舗装された道、行き交う馬車、賑わう店通り。
──全てが美しかった。
どこが美しいのかなんてわからない。しかし、漠然と感じた美しさに、息を呑んで呆然と突っ立つ。
ずっと眺めていたいと思うような、穏やかで美しい風景が、目前に広がっていたんだ。
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