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それから彼は腰に下げた革の袋から何枚かの貨幣を取り出して門番に手渡す。すると、門番は署名を確認してからリューティスにギルドカードを返し、金属製の札を二枚、彼に手渡した。
「使う──わかる──?」
「勿論──」
リューティスは頷いて、札の片方を俺に差し出してきた。
「何これ?」
名前も知らない可愛らしい花が、凹凸によって描かれている。受け取りながら彼に訊ねた。
「この街を出入りするのに必要なものだよ。この札があれば、出入りの時にさっきやったことが全部省かれる。魔力を流せば、その人の魔力の色に絵柄が染まる。……ほら、こんなふうに」
彼は魔力を流したらしい。可憐な花が銀に色づいている。
「これで、魔力を流した本人以外が触れると弾かれるようになる」
つまりは、悪用を防ぐための措置ということか。もしこれを落としても、本人以外は使えない。つまり、他人がこれを持ってここで検問を受けずに街を出入りするのを防ぐことができるのだ。
「へー、すごいな、これ」
感心して呟きながら、俺も僅かに魔力を流した。ようやく放出する魔力量のコントロールができるようになってきた。最近は変に魔法が爆発することもほとんどない。
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