出会ったのは、見たこともない生き物だった。

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   逃げようにも足が動かない。四足歩行で一歩ずつ近づいてくるそれに声をあげたいが、震える口から出るのは空気だけ。  『目をそらさずにゆっくりと退避して……』なんて熊と遭遇したときの対処法を思い出したが、実践は不可能だ。  しかし、目はそらせない。そらさないのではなく、動かせないのである。  ゆっくり近づいてくるそれは、巨大な口をあけて────、なぜか動きをとめた。 「え……?」  間の抜けた声が、口から漏れる。そして、大型犬一頭分はあるであろう大きな頭が『ずれた』。  崩れ落ちる熊、離れる首。吹き出す青みがかった血を見た俺は、胃から上がってくる酸っぱいものを堪えきれず、せっかく補給した水分を吐き出した。……全て。 .
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