その日、俺は死んだ。

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   開け放たれた窓から、初夏の眩しい日差しとともに、まだ少し冷たい風と騒がしい蝉の鳴き声が入ってくる。  風邪をひいているわけでも、何か大病を患っているわけでもない。しかし、身体がだるくて、俺は起き上がることもできず、ぼんやりと外の景色を眺めていた。  ──今日が、俺の人生の最後の日だと、なんとなく感じていた。  小さい頃から身体が弱い俺は、よく病気にかかった。それは普通の子供なら二日、三日で治るはずの風邪だったり、一歩間違えれば死に至るような大病だったりしたが、そのいずれもが俺の身体にとっては脅威だった。  日に日に衰弱していく俺を見て、両親は俺の延命のために名高い医者を探してきたり、高い入院費や治療費のために身を粉にして働いてくれたが、手の施しようがなかったらしい。  なぜならば、俺は『身体が弱い』だけだから。何処かが悪いということではなく、単に病弱で体力がなかったのだ。 .
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