Wake up the Bastard

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ここは“ミスティカリア”……魔法が当たり前のように存在し、人や動植物のみでなく魔物や精霊などが住む世界。その内の一国“アルガード”は、王により統治されている人口約3億人の王国だ。 アルガード首都“アクレル”。店や様々な建物が立ち並び、人口は約5000万。アルガード一番の都会だ。治安はいい方だが、それでも路地裏の方は不良やゴロツキがたまっていたりする。 ――物語はアクレルのとある路地裏から始まる。 「おう姉ちゃん、俺たちとどっか遊びに行こうぜ」 「いえ、私はこれから用事が……」 黒い長髪の少女が、三人の男に絡まれている。少女は困った表情を浮かべながら、絡んできた男の内の一人にそう答えた。 「そんなこと言わずにさぁ」 「そうそう、きっと楽しいぜ?」 用事があるという少女の言葉に構わず、残り二人が不気味に笑いながら言った。 「やっ、やめてください……」 少女は冷や汗を流し、怯えたようにそう言った。 「ん? あれは……おい」 偶然通り掛かった一人の少年が男たちに呼びかけた。彼は黒の短髪を風になびかせながら男たちと少女を見ている。その双眸は柔らかくもあり、鋭くもある不思議な眼光を放っていた。 「あ? なんだテメ」 「関係ねぇ奴は引っ込んでろや! 今取り込み中なんだからよぉ!」 「その子嫌がってんじゃねーか。やめてやれよ」 男たちの威圧的な態度に怯みもせず、少年はそう言った。 「おいおい兄ちゃんよ、もしかしてやる気か?」 最初に少女に“遊びに行こう”などと言って絡んできた男が、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべながら尋ねる。 「なんでそうなるんだ……まあ、負ける気しねぇけど」 「ケッ! 言ってろ! その言葉、あとで後悔させてやる!」 少年がため息をついて答えると、先程挑発気味に尋ねた男を始めとする三人の男は短い棒状のものを取り出した。魔法の発動を補助する道具、つまり杖だ。 「「「炎よ、ここに集いて弾丸となれ」」」 三人が声を揃えて呪文を唱える。すると三人の杖先に炎が灯ってゆき、みるみるうちに炎は球状となる。 「「「“ファイア・ボール”!」」」 三人は叫ぶ。すると三人の持つ杖から一発ずつ火球が放たれた。計三発の火球は、少年へと一斉に飛んでゆく。 「あっ、危ない!!」 少女は火球が少年へ向かう様を見て叫ぶ。その刹那―― 「“アクア・ショット”」 少年が突き出した掌から水の球が放たれ、三発の火球を鎮火した。
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