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「“詠唱破棄”だと!?」
「何驚いてんだよ、こんな下級魔法の詠唱破棄くらいで……むしろファイア・ボール程度の下級魔法を詠唱しなきゃ使えない方が驚きだわ」
驚愕する三人の男に対し、少年は呆れたような表情で言い放つ。魔法には難易度ごとに下級から最上級の四段階があり、“ファイア・ボール”と“アクア・ショット”は最も難易度の低い“下級魔法”に分類される。
“詠唱破棄”とは魔法を使う際に必要な呪文詠唱を省略して魔法を発動させる技術である。下級魔法程度ならコツを掴めば詠唱破棄でも発動できるが、詠唱込みの魔法より比較的魔力の消費量が多くなり威力や精度も低下することが多いため、中級以上の魔法にはあまり使われない。
「そ、そうだよなぁ! 下級魔法の詠唱破棄くらいで驚いてちゃしょうがねぇよな!」
「大丈夫か? その焦り様からしてかなり無理してんじゃねぇの?」
焦りの表情を見せる男三人に対し、少年は至って冷静に尋ねた。
「なっ……もう許さねぇ、ぶっ殺す! 行くぞ!」
「「おう!!」」
痛いところを突かれて逆上した三人は、再び杖を構え呪文を詠唱しはじめた。
「「「風よ、見えざる刃となりて敵を切り裂け」」」
詠唱を終えた三人は、杖を振り下ろし、魔法名を声高に叫ぶ。
「「「“ウィンド・エッジ”!」」」
振り下ろした杖から放たれたのは、小規模な風の斬撃。不可視の小さな風刃を飛ばす風属性の下級魔法だ。
「あんたら、下級魔法すら詠唱破棄できねぇの?」
少年は呆れたように小さく呟いた。
「ケッ! 言ってられるのも今の内だ! 細切れになりやがれ!」
少年の呟きが三人に聞こえたようで、その内の一人が勝ち誇ったように笑いながら言う。
計三発の不可視の刃が少年に飛んでゆくが、ことごとく避けられる。
「ど、どういうことだ!?」
「なんで当たらねぇ!?」
「目に見えない風の刃が、何故避けられる!!」
三人が怯えたように震えながら、口々に言った。
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