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「魔力の流れで軌道くらい読めんだよ……今度はこっちの番だぜ、オラァッ!!」
少年が男たちに接近し、その内の一人の腹目がけ前蹴りを放った。
「「「ぐあああっ!」」」
少年の蹴りに吹き飛ばされた男が残り二人の男に激突し、三人は同時に気絶した。
「安心しな、死にはしねぇよ」
少年が砂を払うかのように両手を叩いて言った。
「あ、あの……」
先程絡まれていた少女が、心配そうな声で少年に呼び掛けた。
「ん? どうした? どっか怪我でもしてんの?」
少年は首を傾げながら尋ねる。
「いえ、そうではなく……た、助けていただいて……その……ありがとうございました!」
「ああ、そういうことか。いいよ礼なんか」
少女が吃りながらも発した感謝の言葉に対し、少年はあっさりとそう返した。
「ところで、さっき使ってた魔法……下級魔法ですよね? しかも詠唱破棄の」
「ああ、そうだけど……」
少年は少女の問いに対し、少し困惑気味に答えた。
「でも……あのアクア・ショット、下級とはいえ三発の魔法を一度に無力化するなんて……中級ほどの威力はありましたよ? なぜ下級魔法なのにあれほどの威力が出るんですか?」
少女は不思議そうな表情を浮かべながら、少年に問いを投げ掛けた。
「ああ、少し力を込めて放ったからかな。そもそもファイア・ボール、アクア・ショット、ウィンド・エッジは下級魔法の中では強い部類だし……火は水を蒸発させ、水は火を消す。相反した属性の魔法がぶつかり合った場合“どちらの属性が強いか”で勝敗が決まる。俺のアクア・ショットがこいつらのファイア・ボールの勢いを上回っただけの話だ」
少年は後頭部を掻きながら答えた。
「そういえば、あなたからは強い魔力を感じます……もしや、良家の御子息では?」
「いや、俺はただの平民、庶民さ。ごく普通の家庭で生まれ育った至って普通の一般市民だよ」
少年は小さく笑いながら、少女の問いにそう答える。
「そうでしたか……」
訝しげな表情で呟く少女。それもそうだろう、詠唱破棄の魔法で詠唱して放った魔法を相殺するのは並の魔力では不可能だ。それができるほどの強い魔力を持っているのは、大抵の場合王族か貴族に限られる。彼が平民ということに疑問を抱くのも当然だ。
「んじゃ、俺もう行くわ」
「待ってください」
少年が立ち去ろうとしたとき、少女が呼び止めた。
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