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「入団試験はないが、その代わり実力査定を受けてもらう。実力査定では戦闘力を見るため、二人にはギルド員と模擬戦を行ってもらう……っても今は誰もいねーし、来るのを待つのも面倒だから実際にやんのは明日だ」
ギルドマスターは前半は堅い口調で、後半は軽く笑いながら説明する。
「明日か……よし、やってやらぁ」
「よかったぁ……」
気合十分のザッシュとは対照的に、リフィアは安心して力が抜けてしまったようである。
「おいおい、査定は明日だぜ? 気を抜くなよ」
「わ、わかってますよ! ただ、剣を家に忘れてきてしまったので……“剣なしで戦うことにならなくてよかった”って思っただけです!」
からかうように言うザッシュに、リフィアは若干ムキになりながら反論した。
「ああ、だからあの不良どもに絡まれるままで抗えなかったのか……」
「え? 何? その子……リフィアだったっけ? 絡まれてたの?」
「どこに食い付いてんだよ……」
ザッシュは予想外の反応を見せたギルドマスターに対し、呆れたような苦笑を浮かべながら呟いた。
「3人くらいいましたね。でも、現場にたまたま通り掛かったザッシュさんが助けてくれたんです」
リフィアが隣のザッシュを指差し、微笑を浮かべながら言った。
「へぇ……やるな。不良に絡まれてる女の子助けるなんてなかなかできねぇぞ」
「奴らが弱すぎただけだっての……つーかリフィア! わざわざ話す必要ねぇだろ!」
「フフ、いいじゃないですか」
照れたように言うザッシュを見て、リフィアは小さく笑う。
「もしかしてお前ら……付き合ってんの?」
ギルドマスターは笑いながら、二人のやりとりを茶化した。
「はぁ!? なんでそうなるんだよ!」
「違います! 大体私たちは今日会ったばかりなんですよ!?」
ザッシュとリフィアは全力でそれを否定した。
「冗談だよ、冗談。いや、なんか仲良さそうにしてたからな……てか俺、男女の仲が良いとすぐ恋愛と結びつけちまうんだよ」
「直せ、その癖!」
「本当ですよ!」
「直そうとは思ってんだがなかなか難しいんだわ、これが」
ギルドマスターは後頭部を掻きながら、軽い笑い声を挙げた。
「ま、とにかく実力査定は明日実施するから体調整えとけよ」
「いきなり本題に戻ったな……」
脱線した話が、何の脈絡もなく軌道を修正したことにザッシュはホッとしながらも苦笑を浮かべた。
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