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男の背後に2メートルはある体をボロ布で覆った大男が立っていた。
そして、そいつは男の頭を片手で掴み軽々と持ち上げた。
「あががががっ!」
男は掴まれた苦しみからかまともに喋れずバタバタと暴れている。
「その者を離しなさい。さもなくば!」
「………」
頭部から手が離され、男は地面に落とされる。
落とされた男は掴まれた恐怖からか落とされた直後に失神し動かなくなった。
「それでいいんです。次は手を上げ…」
警告を最後まで聞かず大男は女がいる方向に歩みを進める。
「なっ、待ちなさい!警告が聞こえないんですか」
大男は女のすぐ目の前まで来ると、バーンを持っている方の腕を掴む。
「あっ、うぐぅぅ!」
女はあまりの痛みにバーンを手から落としてしまった。
すると、大男はすかさず女の腕から手を離して落ちたバーンを拾い上げる。
「……」
大男は無言でバーンを拾ってからしばらくしてから、腕を押さえている女に背を向けその場を立ち去ろうとする。
女は大男を追おうとしたが身体が動かない。
呼び止めたくても声が出ない。
そして大男はその場から離れていき、やがてその姿は見えなくなってしまった。
それからしばらくしてバーン所有者を連行しに来たパトカーが到着した頃に女は自分が腕を掴まれただけで恐怖し動けなかった事にやっと気付いた。
その身体から震えがしばらく止まらなかった。
「私が恐れるなんて、今まで無かったのになぜ…」
その女、御堂蒼葉(みどう あおば)はそう呟いた頃に夜が明ける。
そして、この出来事からこの物語は始まる。
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