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「すまないね。わざわざ、持ってきてくれなんて」
タッパーに入った魚を受け取ったX氏は申し訳なさそうな顔をしていた。
「構いませんよ。それより、お宅の方は大丈夫でしたか?今年は、参加者がずいぶんと多かったようですが」
「うちは大丈夫でした。侵入してきた連中は全員、庭で息絶えました」
Y氏の家より広い庭をもつX氏はそんなことを言いながら、死体が片付けられた庭を自慢気に見せた。庭の死体は片付けられてはいるが、まだ対人地雷の生々しい跡が残されていた。
「しかし、何ですな。いつまで、この平和記念日というのは続くのですか?」
Y氏は顔をしかめながらそんなことを言う。
「嫌ですか?」
「だって、そうでしょう。いくら、平和の為とはいえ危険分子となりうる人を殺すなんて」
平和維持とはいえ、人を殺しておいて、良い気分な訳がない。毎年、この時期の直後、Y氏の胸はムカムカしていた。
「まぁ。そうクヨクヨする必要はないさ。だって、昔から言うでしょう?平和は何かの犠牲の上に成り立っているって・・・」
平和を語るX氏の胸元で、平和の象徴ともいうべき金バッチが今日も誇らしげに輝いていた。
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