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良く晴れた日のこと、Y氏は釣りでもしようと思い、近くの釣り具店で買った初心者用の釣り道具一式を持って家を出た。家の近くには、小さな川がある。
都市開発が見直され、都会でありながらも魚が住める程に川の水は澄んでいた。
Y氏は折りたたみ椅子を広げて腰を下ろすと、釣り糸を川に垂らした。よく澄んだ川の水はキラキラと輝いて美しい。川のせせらぎも、また人の心を和ませた。
「釣れますか?」
Y氏に話しかける人がいた。振り返ると、近所のX氏が立っていた。
「ええ。今日、家に帰ったら釣った魚で天ぷらでもしようと思います」
「それは、おいしそうですね」
「そうだ。出来が良かったら、お裾分けに伺います」
「それは、楽しみですね。では・・・」
X氏はY氏に軽く頭を下げて立ち去った。再び一人になったY氏は溜息をつき、魚が釣り針にかかるのを待ち続けた。
そんなY氏の胸元には平和の象徴ともいうべき金バッチがキラリと輝いていた。
この時代、人々は全員、この金バッチを身に付けている。これは、世界が平和であるという証でもあった。
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