指輪

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「…翔太!…それは、ないだろう?! ああ…沙也加さんが、可哀相だ…。」 「…そんな、露骨な顔で、責めるなよ…誠。」 大野は、俺を、友達の中でも、特別な親友なんだと、言って、あの夜以来、公の会話以外は、俺を下の名前で呼ぶようになった。 相手に合わすと、必然的に俺も、そうなった。 沙也加に関しては、直に、姓が変わるんだからって、理由で、下の名前呼びになった。 ただし、家族でも、恋人でもないのに、呼び捨ては、まずいからと、律儀に、さん付けでだが…。 それがあっての、さっきの会話だ。 俺が、誠に、責められてるのは、仕方のないことだ。 すっかり、忘れていたんだからな…大事なことを…。 「別に、特別な日じゃなくても、女の子は、大切な人からもらった物は、宝物なんだよ。 ましてや、沙也加さんは、お前の婚約者だろ! 婚約の証になる物を、なんにも、贈ってないなんて、迂闊すぎだろうが…。」 「…反論の余地も、ありません。」 「わかりゃあ、いいよ。 今日は、俺と飲む約束だから、最後まで、付き合えよ…その代わり、明日は、沙也加さん連れて、絶対、買いに行けよ!なっ!」 「わかったよ。」 俺は、ブーケのことと、プロポーズのことばかりを、考えていて、その後のことを、まだ、ちゃんと考えられていなかった。 沙也加のお父さんの言葉に、甘えてしまって、本当なら、結納とか、結婚までにしなければいけないことを、考えなきゃいけなかったのに…。 俺は、全然、できてなかったんだ…。
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