指輪

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帰り際の女子更衣室…。 沙也加の左の薬指に、キラリと輝く物があった。 「…吉野さん、綺麗な指輪ね。」 「うふっ…これね、婚約指輪なの。」 「ええ~っ、いいなぁ。」 その声に、周りにいた、何人かの女の子達が、集まってくる。 「…何?何?」 「見て、吉野さんの指。綺麗でしょ。…婚約指輪なんだって。」 「うわぁ、本当だ。すごく綺麗ね。」 「婚約指輪なんて、羨ましいなぁ。」 「…相手は、やっぱり、斎藤さん?」 「うん。」 「わぁ…いいなぁ。」 「斎藤さんて、第一営業部の斎藤さん?」 「決まってるじゃない。」 「一時期、すっごい噂になってたもんね。」 「いいよなぁ…吉野さん、モテモテで。」 「そんなぁ…モテモテなんて、滅相もない。」 「だって、大野さんにも、告られたんでしょ。…勿体ない…。」 「あのね…確かに、大野君には、お付き合いして欲しいって言われたよ。 大野君の気持ち…痛いほどわかったよ…私だって、片想いしてたんだもの。 だから、それこそ、一番最初に、大野君から、気持ち聞いた時に、ちゃんと、断ったのよ。 でも…そんな簡単に、諦められないんだよね…。」 「ああ、なんだか、その気持ちわかるよ。」 「うん、私も。」 「私もだ…。」 「…それで、大野君が、吉野さんを、何度も、お茶に誘ったり、二人っきりで、話したりしてたんだ。 で、それを見た人は、二人は、付き合ってるって、勘違いした。」 「噂が、独り歩きした。」 「そうなのよ…斎藤君まで、そうだと思ってたのよ。あれには、びっくりしたわ…。」 「まあ、最終的には、斎藤さんが、吉野さんと付き合うことになり、遂には、婚約かぁ。」 「…ねぇ、いつ結婚するの?」 「来年…6月くらいかな。」 「ジューンブライド♪」 「そんなの素敵すぎよ。」 「吉野さん、やっぱり、羨ましいわ、私達。」 いつか私も…。 そこにいた女の子達は、沙也加に、未来の自分の姿を、重ねていた…。
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