指輪

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電車に、三人で揺られていた。 窓から、外を見ていた沙也加に、誠が、声を掛けた。 「沙也加さん、指輪見せてよ。」 「指輪?…これでいい?」 「うん、いいよ。」 しばらく眺めてから、誠は、感想を言った。 「…本当だ、女の子達が、きゃあきゃあ言うだけあって、綺麗だねぇ。 翔太のは、どんなの?」 「同じデザインだよ。」 そういって、誠に、左手を見せる。 「おっ、こいつも綺麗だねぇ。…並べてみてよ。 あっ、付いてる石…違うんだ。」 「うん…誕生石にしたんだ。 俺のは、4月で、ダイヤ…っていっても、ジルコニアだっけ、人工のやつ。 沙也加のは、7月で、ルビー。小さいけど、こっちは、本物だよ。」 「…いいなぁ…俺も、こういうの作ろう…。」 「誰か、いい人、出来たのか?」 「…いねぇよ。…そんな簡単に、沙也加さんより、素敵な女性は、見つけらんねぇって。 それに、いい加減なことして、女の子と付き合ったら、亜美に、怒られるし、嫌われる…。 …それだけは、嫌だ。」 「…ふうん…そう。」 「なんだよ、それ!」 「誠…気付いてないだろ? お前…どう見ても、聞いても、シスコン。」 「…どこがだよ?」 「俺は、お前が、シスコンじゃないって、わかってるけどな…。 島崎に、怒られたくないとか、嫌われたくないとか、そんなことばっかり言ってたら、そう思われるぞ。」 「…いいよ!…シスコン上等だ!」 「うふふ。最近の大野君、面白いね。」 「…最近じゃなくて、俺は、昔から、本当は、こんななの…会社の中で、馬鹿言えないでしょ…。 二人の前で、猫かぶるのは、やめたんだよ。」
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