指輪

10/13
前へ
/533ページ
次へ
「おばさん、ご無沙汰してます。斎藤です。」 「あら、翔太君なの?! まあ、少し見ない間に、立派になって。」 「そんなことないですよ。あの…こいつ、俺の同僚で、大野って言います。 ここ、教えて欲しいって、言うんで、直接、連れてきました。」 「…はじめまして、大野です。 野上君とは、この前、意気投合しまして、店に、是非にって言われたんで、今日は、カットを、お願いしようかなって。」 「まあ、ありがとう。 信章、今、お客様に付いてるから、少し待っていただいても、いいかしら?」 「はい、いくらでも。」 「翔太君、こちらのお嬢さんは?」 「俺の婚約者なんです。」 照れながら、沙也加を紹介すると、信章のお母さんは、にっこり笑いながら、 「おめでとう、翔太君。」 と、言ってくれた。 10分ぐらいすると、信章が、対応していたお客さんのカットが終わって、こっちへ来た。 「…お待たせしました。」 「野上君、お言葉に甘えて、越させてもらったよ。 カットを、頼んでいいかな?」 「それは、もう喜んで。 翔太は、どうするの?」 「…今日は、誠を、案内してきただけだよ。 沙也加もいるから、今日は、帰るよ。」 「そりゃあ、残念。 沙也加さん、髪、だいぶ伸びたね…。 あれから、一度も、ハサミ入れてないでしょ? 襟足の長さ、揃えた方がいいから、今度、時間ある時に、おいでよ。」 「はい、ありがとうございます。」 沙也加は、いつかの髪切り事件で短くなった髪を、また、伸ばしはじめていた。 「それじゃ、また、月曜な、誠。」 「ああ、またな、翔太。」 翔太と誠は、約束通り、ここで、別れた。
/533ページ

最初のコメントを投稿しよう!

439人が本棚に入れています
本棚に追加