指輪

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沙也加の家についてから、結納を納め終わるまで、俺は、ガチガチに、緊張していた。 「…謹んで、お受けいたします。」 そう、沙也加のお父さんが、〆の言葉を言ってくれて、やっと、力が抜ける。 「いやあ、本当に、可愛らしいお嬢さんですな。」 「いやいや、普段は、落ち着きのない、がさつな娘で…。はははは…。」 「いやいや、十分に、落ち着いていらっしゃる。 家の嫁より、一つ歳が下だと、お聞きしていたんですが、こちらのお嬢さんの方が、まるで、年上のようだ…。 本当に、落ち着いてらっしゃる。 家の嫁は、天真爛漫すぎて、ハラハラさせてくれますよ、いつでも。わはははは。」 うわ…郁美ちゃん、すごい言われよう…。 褒めてんだか、けなしてんだか…。沙也加も、苦笑いしてるよ…。 あっ、忘れるところだった…。 「…あのう、お話、盛り上がってるところ、すいませんが、お父さん。これを。 沙也加、これ、受け取って欲しいんだ。」 俺は、綺麗な箱を、取り出して、前に置いた。 「これ、お式まで、必要ないものだから、沙也加に、預かっていてもらいたいんだ。 箱を、開けて、中を見てくれていいよ。」 怖ず怖ずと、受取り、箱を開ける。 「…指輪?」 「うん、それは、結婚指輪だよ。…昨日、仕上がって来たんだ。 今、嵌めてる指輪と、似たデザインでしょ。 実はね、別々に、嵌めても、大丈夫なんだけど。 二つを、一緒に、嵌めたら、別のデザインが、出来上がるようになってるんだって。」 「…すごい素敵。…ねぇ、翔太、私、これを嵌めて、あなたのお嫁さんに、なるのね?」 「そうだよ。」 見たことないくらい輝いた笑顔で、沙也加は、言ったんだ。 「私、世界一、幸せよ!ありがとう、翔太!」
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