439人が本棚に入れています
本棚に追加
沙也加の家についてから、結納を納め終わるまで、俺は、ガチガチに、緊張していた。
「…謹んで、お受けいたします。」
そう、沙也加のお父さんが、〆の言葉を言ってくれて、やっと、力が抜ける。
「いやあ、本当に、可愛らしいお嬢さんですな。」
「いやいや、普段は、落ち着きのない、がさつな娘で…。はははは…。」
「いやいや、十分に、落ち着いていらっしゃる。
家の嫁より、一つ歳が下だと、お聞きしていたんですが、こちらのお嬢さんの方が、まるで、年上のようだ…。
本当に、落ち着いてらっしゃる。
家の嫁は、天真爛漫すぎて、ハラハラさせてくれますよ、いつでも。わはははは。」
うわ…郁美ちゃん、すごい言われよう…。
褒めてんだか、けなしてんだか…。沙也加も、苦笑いしてるよ…。
あっ、忘れるところだった…。
「…あのう、お話、盛り上がってるところ、すいませんが、お父さん。これを。
沙也加、これ、受け取って欲しいんだ。」
俺は、綺麗な箱を、取り出して、前に置いた。
「これ、お式まで、必要ないものだから、沙也加に、預かっていてもらいたいんだ。
箱を、開けて、中を見てくれていいよ。」
怖ず怖ずと、受取り、箱を開ける。
「…指輪?」
「うん、それは、結婚指輪だよ。…昨日、仕上がって来たんだ。
今、嵌めてる指輪と、似たデザインでしょ。
実はね、別々に、嵌めても、大丈夫なんだけど。
二つを、一緒に、嵌めたら、別のデザインが、出来上がるようになってるんだって。」
「…すごい素敵。…ねぇ、翔太、私、これを嵌めて、あなたのお嫁さんに、なるのね?」
「そうだよ。」
見たことないくらい輝いた笑顔で、沙也加は、言ったんだ。
「私、世界一、幸せよ!ありがとう、翔太!」
最初のコメントを投稿しよう!