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「…吉野さん、なんで、旅行鞄なんて、持って来てるの?」
「…あはっ…祥子ちゃん、見ちゃった?」
「うん、バッチリと!
ねぇ、週末なら、わかるけど、まだ、週半ばよ?」
「…えっと…そのう…さ、斎藤君の家に…お泊りなの…。日曜まで…。」
「日曜まで?!…まあ、えらく大胆ね。
うふっ。明日から、斎藤君と、同伴出勤じゃないの。ヒューヒュー♪」
「そ、そんな言い方…しないで…恥ずかしい…じゃない。」
「別にやましいことは、ないでしょ。あんた達、婚約してるんだから。」
「…でも、初めてのことだから、恥ずかしいのよ…。みんなに、いろいろ言われたらって、思うと…。」
「ごめん。…そんな顔しないで。
でも、今頃なんで?それくらいは、教えてくれる?」
「うん。あのね…結婚式までに、斎藤君の家を、リフォームすることになったの…でも、一人じゃ片付け切れないから…。」
「斎藤君て、一人暮らしなの?」
「ご両親亡くなってからはね…。」
「あっ、なんか、まずいこと聞いちゃったかな…。」
沙也加は、小さく首を、横に振って、答えた。
「大丈夫…気にしないで。
斎藤君のお家、お祖父様が、建てたんですって…だから、大切にしているの。
結婚したら、私達、そこで暮らすことに、なってるんだ。…けど、昔の間取りだから、使い勝手が、少し悪いの。
それで、リフォームすることにしたんだ。
ちゃんと、出来上がって、お式も、終わったら、遊びに来て、招待するから。」
「本当に?…じゃあ、その時まで、楽しみに待ってるわ。」
「うん。…さっきの話は、みんなには、しないでね。
気を使われるのも、私、嫌だから…。
あっ!そろそろ、時間よ。急ごう!」
パタンと、ロッカーの扉を閉めると、沙也加は、営業部へ向かって、祥子と、走り出した。
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