舞い降りた天使…

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はあ…X'masだってのに、俺は、なんで、一人で街をうろついてんだろう…。 虚しいし、切ないなぁ…。 周りを見りゃ、カップルと、ファミリーだらけ…。 そうじゃない奴らも、仲間同士で、ワイワイガヤガヤと、楽しそうにしているってのになぁ…。 そんなことを、考えながら、雑踏を歩いていたんだ。 本当に、その一瞬、俺の前の雑踏が、スッと消えて、まるで一本道が、出来たみたいになった。 その先に、ふわふわの真っ白なコートを着た、女の子がいた。 その子と、向かい合う様に、歩いてきた厳つい男が、軽くぶつかった。 女の子は、弾き飛ばされた感じで、よろめいて、雑踏に、崩れた。 無意識の内に、俺は、前に向かって、彼女の姿を探して、進んでいた。 「…大丈夫か?」 「ありがとう…。」 消え入りそうな小さくか細い彼女の声。…でも、すごく綺麗な、透き通る様な声だった。 何だろう?…この感覚。 覚えがある…昔…そう学生の頃だ…。 ああ…わかった。亜美に、初めて会った時と同じなんだ…。 きっと、俺は、彼女に、恋をするんだ…この後。 「…どうしよう!…ない!ない!…どこ?」 目の前の彼女は、突然、自分の周りを、キョロキョロと見回して、何かを探し始めた。 「…あれが、なかったら…何にも出来ないよ…。 …聞こえないのは…嫌。 …嫌だぁ…ぐずっ…どこ?」 泣き出した彼女に、聞いてみる。 「俺、一緒に、探してあげるから、何を探しているの?」 「…補聴器。」 「どんなの?」 「白くて小さいの…。」 二人で、目を凝らす…。 「あっ!」 彼女が、見つけた瞬間…。 ガシャ! 聞きたくない、硬質な物の壊れる音がした…。
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