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「…ありがとう。」
真琴は、誠に、素直な気持ちで、お礼を言った。
「いや、俺の自己満足だから、気にしないで。」
「…でも、本当に助かりました。
大野さんの声、これで、ハッキリ聞こえます。」
「…なら、よかった。」
真琴の耳には、新しい補聴器が、着けられていた。
「あの…このお代金なんですけど。」
「…言っただろ、俺は、小金持ちのリーマンだから、気にすんなって。
ある時払いで、いいよ。」
「…でも、ちゃんとお約束しないと。」
本当に、きちんとした躾を受けてる感じだよな…。
「…わかった。じゃあ、毎月、少しずつ返してくれたらいいよ。それで、君が、納得するならね。
けどさ…よく考えたら、俺、君が、学生なのか、社会人なのかも、知らないんだよね。
だから、毎月、いくら請求すればいいかも、検討つかないんだけどな…。」
「…すいません?…私、ご迷惑かけた上に、こんなに優しくしていただいてるのに…。」
「そんな、恐縮しないでよ…俺も、リーマンだってことしか、言ってない訳だしさ。
まあ、名乗る程の男じゃないけどさ。」
「…私、S大学の3年です。」
「そっかぁ、大学生か…ならさ、無理して、一度に、返そうなんてするなよ。
本当に、いつでもいいんだから。」
「ありがとうございます。…お言葉に、甘えさせてもらいます。
でも、申し訳ないんで、何か、お礼させてもらえませんか?」
「お礼って…。」
ちょっと、困ってしまったが、逆に考えたら、彼女と、親しくなるチャンスだよな。
「あのさ…お礼してくれるっていうなら、君の都合のいい日で、いいんだ…俺に、一日、君の時間を、くれないか…。
下心、丸見えな男のお願いなんて、きいてもらえないかな?」
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