舞い降りた天使…

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真琴の母、眞知子は、娘の小さな変化に、気付いた。 昨日は、大学のサークル仲間と、X'mas限定のメニューを食べるんだと言って、出掛けて行った。 そういう時は、大抵、帰ってくるなり、今日のメニューは、どうだった、こうだったって、話しかけて来るのが、常だった。 けれど、昨日は、帰ってきてから、ほとんど、話をしない…。 こちらから、ランチは、どうだったのかを、聞くまで、食べてきた限定メニューのことなんて、一切、話さなかったし、なんだか、四六時中、ふわふわとしている感じで、何を聞いても、最後が、尻切れトンボになっていた。 今朝も、学校がある訳でもないのに、いつも通りの早い時間に、起きてきていた。 いつもなら、昼前まで、平気で、寝ているのに…。 気には、なったが、年頃の娘だ、悩みの一つや二つは、あるだろうし…。 もう少しだけ、様子を見ることにした。 眞知子は、何事もなかったかの様に、真琴に、話しかけた。 「真琴、…今日、お母さん、仕事場の忘年会なの。 夕飯、一人で大丈夫?」 「えっ?…夕飯…ん~っと…大丈夫だよ。 あのね…急だけど…私も、夕飯、外で食べて来る。 だから、気にしないで、ゆっくり、楽しんできて。」 「…夕飯…外でって…誰と?」 「一々、言わなくちゃいけないの? …私…もう21だよ…。」 「ああ、ごめんなさいね。別に、真琴を、信用してない訳じゃないのよ。 ただね、今まで、そう言うの、あなた避けてたでしょ…。 夜になったら、帰り道が、不安だからって…。 だから、気になっただけなのよ。 行くなら、帰り道は、気をつけてね。 夜は、周りがよくわからないんだから、出来るだけ、早く帰ってきなさいね。 あなたは、馴れてないんだから…。」 「うん…わかってる。」 「わかってるなら、いいのよ。お友達と、楽しんで、きなさいね。真琴。」 そう言って、笑いかけると、真琴も、笑い返してきた。 「うん!ありがとう、お母さん!」 見たこともないくらい、すごく嬉しそうだった…。
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