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帰りの電車の中…眞知子は、真琴に、話し掛けた。
「…お母さん、本当に、びっくりしちゃったわよ。
まさか、真琴が、デートだなんて…なんで、正直に、言わなかったの?」
「…だって、大野さんと、お付き合い始めたばっかりだし…なんとなく、照れ臭かったし…いきなりは、お母さん、びっくりしちゃうと思って…。」
「あのね、黙ってられる方が、心配するのよ。
わからない方が、不安なの。わかるわね?」
「…うん。」
「大野君だったわね。彼、良さそうな子ね。
でも、一体、どこで知り合ったの?」
「繁華街の雑踏でね、私、ぼんやりしていて、前から来た人に気付かなくて…ぶつかって、こけちゃったの…。
周りの人達、私に気付いたのに、みんな知らん顔してた…。ぶつかった人もだよ…。
そんな中、大野さんだけは、違ったの。
倒れた私に、手を差し延べてくれたし、弾みで、落とした補聴器も、一緒に、探してくれたんだよ。
少し慌てちゃって、聞き取れるはずの声も、聞き取れなくて…。
でも、大野さん、何度も、私が、わかるまで、話し掛けてくれたし、即興で、携帯使った筆談まで、してくれたの。
少し落ち着いてから、この人、凄いなって思ったし、この人なら、私をわかってくれるんじゃないかなって、思った。」
「まあ、本当にいい人だし、機転の効く人ね。
だけど、それは、出会ったきっかけでしょ?」
「そうだね、お母さん。
あのね、一目惚れって、あると思う?」
「一目惚れ?そうね…あるんじゃないかしら。」
「私…大野さんに、一目惚れしちゃったみたいなの。
大野さんに、優しい言葉掛けてもらって、その上、付き合って欲しいって、言われて、天にも昇る気持ちだったの…だから、即答しちゃった。」
本当に、この目の前にいるのは、私の真琴なの?
あんなにも、すべてのことに、臆病になっていた、あの子なの?
恋は、女を強くするのね。
真琴は、紛れもなく、私と同じ、女なんだ…。
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