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居酒屋で、俺は、差し向かいで、酒を飲んでいた。
上司に強要された、つまらない酒席なんかより、気楽に飲めるここの方が、いい…。
俺は、別に出世しようなんて、思ってないし、出来る仕事を、完璧にこなして、その評価さえもらえれば、それでよかったから…。
向かいに座ってる相手に向かって、ほろ酔い加減の俺は、なぜか、恋愛談議など始めてしまった。
「なあ、片想いってしたことあるか?
俺は、あるぜ…。
片想いの結末てのは、二つしかない。
一つは、ハッピーエンド。
お互いの気持ちも盛り上がって、晴れて両想いになれるんだ。
もう一つは、バッドエンド。
失恋して、涙にくれるわけだ…。
俺の片想いは、バッドエンド…なんだけど、その相手とは、まあ、ちょいと、不思議な関係。
俺は、彼女の自称・ファンクラブ会長…とは言っても、会員は、俺だけなんだけどな…。
高校卒業してから、かれこれ、6年だが、仲良く友達としては、付き合ってもらえてる。」
「…まったく脈なしなの?…その子は?」
「…脈なしなのかって?
…ああ、ないよ。今、ここで、断言する。
まあ、天地が、ひっくり返っても、彼女が、俺のものになることは、ないな。
だってさ、彼女は、もう子持ちの人妻だよ…。
彼女のためを思うなら、潔く身をひいて、温かく見守ってあげるのが、愛情ってものでしょう。
それに、彼女の旦那はさ、俺の憧れの先輩なんだよね。
あの人以上のことを、俺は、絶対出来ないし、あすこまで、彼女を、きっと、愛せない…。
それくらい、半端ないんだよ…。
二人の結び付きは、生まれてから、ずっとなんだから…俺の入る隙間なし!」
言って、目の前の酒を、一気に煽って、呟く。
「ああぁ…俺にも、早く、春来ないかな…。」
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