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「まあ、聞いてくれよ。
俺の、この片想いと失恋の思い出を…。
あれは、高校生最後の年だ…4月の新学期、一日目の電車の中…。
俺のいつも使っている一つ先の駅から乗ってきた女の子…。
うちの高校の制服で、絞めてるネクタイの色が、俺と同じだった。
幼なじみの浩史が、学年代表でさ、しょっちゅう生徒会やら、委員会やらに、引っ張っていかれてたんだ。
結構、物覚えのいい俺は、おかげで、学年のほとんどの奴の顔を、覚えていたんだ。
…だけど、彼女は、見たことなかった。
で、誰なんだろう?って、考えてる時に、運転手がさ、カーブで、掛けたブレーキのせいで、電車が、大きく揺れたんだ。
揺れた反動で、倒れそうになった彼女を、俺は、咄嗟に、支えていた…。
彼女の名前は、園田郁美。
転校生かと思って、話し掛けたら、留年組だった。
後で、彼女に教えてもらったんだけど、なんでも、生れつき体が弱くて、前の年は、ほとんど病院のベットの上だったらしい。
そのせいで、出席日数が、足りなかったんだと…。
だから、赤点取りまくってダブったやつとは、違うんだよな…。
実際、彼女、頭いいしな。
それに、めちゃくちゃ可愛いかったんだ。」
「ふうん…可愛いんだ、その子…。
それで、惚れちゃったわけだ?」
「…ああ…そうだよ。一目惚れってやつさ…。
ニコッと笑った顔が、すげえ、キュートでさ、なんていうの…この辺をさ、ギュッと締め付けられたみたいになって…。
でもって、ドキドキがさ…止まらないんだよ…。
あんなの初めてだったね。
…たぶん、この先、ないだろうな…あんな気持ちを、持つことはさ…。」
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