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俺に、今、決断を迫っている彼女は、俺のいる第一営業部に、今年配属されてきた、吉野沙也加。
「なあ…、本当に、俺と付き合いたいの?」
「うん。」
頷く彼女に、俺は、考え込んでしまった…。
同期入社の彼女とは、彼女の言う通り、新人研修以来、ほとんど、接点がなかった。
最近、同じ営業部の大野誠が、彼女といるところを、何人もの同僚達に、目撃されていたから、まことしやかに、二人が、付き合っていると、噂にされていた。
だから、俺も、てっきり、そうなんだと思っていたんだ、今の今まで…。
「…参ったなぁ。」
「…私じゃ、嫌?」
「いや…そうじゃないけど…いきなりな展開で…その…なんだよ…頭が、ついていってない。」
「じゃあ、私は、断られた訳じゃないよね?」
そう言って、じっと、それこそ、まっすぐと言っていい視線を、向けてこられたら、ごまかすわけには、いかなかった。
「…悪い…俺が、こんなこと言うの、変かもしれないけど…、二、三日、考えさせてよ。」
「わかった…。それじゃあ、土曜日…ここで、夕方5時に、待ってる。
その時に、返事頂戴。」
俺は、半強制的に、約束させられた…。
駅で、彼女と別れる頃には、完璧に酔いが醒めていた。
「…どうしよう…。」
はっきりいって、自分から、好きになったことはあっても、今日みたいに、相手から、好きだなんて、告白されたのは、初めてだ…。
まずい…こんなの慣れてないから、頭が、ついていってない…。
俺は、明日、どんな顔で、会社へ行けばいいのかさえわからなかった…。
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