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小咄-f
花が咲いている。
花が揺れている。
赤い花が。
この道を、今年も歩いていこう。
あなたの愛しい花束を両手に抱いて。
「ねえ、今年は来るかな?」
「来るよ! でも、来なかったらどうしよう……」
しゅんとなる二人に、微笑みかける。
「大丈夫だよ。それにね、もし来なくても、それはお母さんが幸せになってるって証拠さ」
『ふーん』
よくわかっていないだろうけど、今年も花束の手を引いて貴女に会いに行くよ。
君は律儀だから、今年も来ているんだろう?
花が咲いている。
花が揺れている。
貴女と一緒に年を重ねることはもう、叶わない願いだけど……
この赤い彼岸花の畦道を通り。
また来年も、貴女に逢いに行くよ。
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