11人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな警察内部やマスコミとの確執などお構い無く、事件は続いていた。
「大阪府で2惨殺体!」
「隣の京都でも惨殺体発見!」
「東京都は板橋区!現場に急がれたし…」
異常というか異様であった。これだけの殺人事件でまるで手掛かりが掴めない。マスコミが警察内部犯行説を唱えるのも納得してしまうほどだ。通常こんなことはありえない。殺人事件などそうそう簡単に起こせるものではない。人が人を殺すという作業は、咄嗟(とっさ)的な犯行でない限り、とてつもない労力がいる。ましてや今回のような残虐な殺害方法では特にだ。
犯人は生きたまま被害者を殺害している。死んで行く様をまざまざ見ているわけだ。通常の精神状態ではない。そんな犯人が防犯カメラなどを綿密に調べ、手掛かりになるような遺留品を一切残さない。現場には拘束に使われた紐状のもの、殺害に使われた凶器などが残されていたが、どれも多く流通しているものばかりで犯人特定には繋がらない。
『犯人像…犯人像が見えてこない!一体どんなやつなんだ?どんな生き方をしてくればこんなことを思い付く人間になれる?』
私はあの時掴めなかった犯人像を今も追い続けていた。
「マスコミと同じなのかな…私も」
最初のコメントを投稿しよう!