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「これがあの事件の切っ先になったというのか?」
私はある殺人事件を追って、青森県の漁港のある寺に来ていた。
「刑事さん、これは百日塚(ももとせづか)と言って、百日も経たずに亡くなった子供を祀る塚です。昭和の初期くらいまでは全国に同じような塚がありました。単純に医療技術のなかった時代の水子とは違うんです」
「水子とは違う?」
「えぇ。江戸時代に多く建てられたと云います。江戸時代、税金はその家の男の数で決められていました。貧しい農家などでは、女の子ならゼゲンに売られ、男の子なら間引かれた」
間引きとは隠語のようなもので、要は生まれてすぐ殺してしまうことを意味する。
「住職、これらの塚は比較的新しいですよね?」
「そういうことです」
「そういうこと…ですかぁ…」
私が青森に訪れるちょうど半年前、その事件は4件目にして“連続猟奇殺人”として捜査本部が立ち上がった。
「…何!?また惨殺遺体が?」
「中村さん、今度のは顔がめちゃくちゃに切り裂かれていたそうです」
「生きたまま拘束されてか?」
「はい」
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