復讐殺人

はじまり

「えぇ、私もそう感じています。私は結婚が遅く高校生の息子がいるのですが、深夜番組で今回の事件を彷彿とされるドラマがあったそうなんです…」

　そのドラマは一年ほど前に放送されたらしいが、視聴率はよくなくあまり知られてはいないが、熱狂的なファンがそこそこいたそうだ。

「そんな番組があったのですかぁ。でもそれならマスコミがもうちょい騒いでもよいのでは？」

　私は素直にそういうと藤田が、

「ネットでは話題になってますよ。多分テレビや新聞媒体のマスコミはそれを安易に語ることを恐れているのだと思います」

「あぁ、あの事件があってばかりだからなぁ」

　広島県警の柿田さんがそういったあの事件とは、Twitterによる誤報をテレビマスコミが裏付けも取らず、まったく無関係の人間を犯人扱いしてしまった事件だ。

　女子高生が男に切りつけられ、それを目撃した人間がTwitterで…

“事件目撃ナウ。アイツどこかで見たことあるんだよなぁ”

　その書き込みは、それから三時間ほどで“炎上”と呼ばれるパンク状態になり、書き込みの情報は数千件を越える異常事態となった。その中の書き込みに、

“○○（地名）の××（店舗名）ってビデオ屋によく来るやつじゃね？”

というのがあった。

　そこから、ある人物像がでっち上げられた。制服モノやレイプモノのAVが好きな20代前半のキツネ目の男。