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悪鬼(あき)らかに、黒い海の中には何かがある。
私はその正体を全く知らないのだが、海が母のようだと云うのであれば、その生み出したるものの中に、どこかおかしなものがあっても全く不思議ではないだろう。
骨の砂塵を波間に乗せて、砂嘴は足元に柔らかく蓄積している。
これは何の骨だ。これは誰のものだ。
海を取り除いても、この白い残骸である砂は、時折突起を出す屍骸の珊瑚礁に、座標をざりざりと、擦り付けて小さくなっている。
この泥のような海には、何ものかが唾を吐いている。
その証拠に深海にある泥は手に触れることが出来ないほどに汚れていて、人間はそこに到達するまでに泡を失って、怒涛に巻き込まれてしまう。
その証拠に海面にある風は耳に残すことのできないほどに甲高く、人間がその声を聞くには我を失って、海の中に巻き込まれてしまう。
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