エピローグ

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野宿の際には必ず文句を発言するが、その割には気持ちよさそうに眠るから彼女には適応力があるのじゃないかと思う。 彼は彼女から視線を外し、今度はもう一人の学者服を着ている女性に移った。 職業はその服の通り、研究員だ。 彼女は少し風変わりでちょっと能天気というか楽観的な性格をしている。 また風変わりと言えば彼女の髪もそうだ。その頭髪に色がなく、白髪である。 元はちゃんと色があったらしいが彼はなぜそうなったか聞かなかった。 聞いた所でどうにかなるわけでもないし、人の事情に首を突っ込むほど野暮じゃない。 青年は次に自分の近くで腕を組んで座りながら寝ている少年に目を向ける。 鎧のような甲冑を着込んだ少年。年は自分より4つ5つ違うくらい。 それなのに、その年でユースティアス(正義を志すもの)という組織の少尉をやっているというのだから大したものである。 ―また木の枝が小気味良い音を立てた。 今度は複数。 そのリズミカルな音につられて青年はまた眠気が襲ってきた。先程よりも強く、彼を無の世界に誘おうとする。 ―もういいだろう。 彼はそう心で呟くと立ち上がって近くの木に寄りかかり座る。そして薄れいく意識にそのまま流れるように身を投じた。 その日、青年―キース・バクスターは夢を見た。あの、悪夢を、暗い闇を。彼は見た。
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