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「へ~い」
そんな母の背に気のない返事で応える。
それからキースは母が出ていった場所をしばし見つめていたが自分のお腹がなる音で、ようやく顔を背けた。
「…腹減ったな。そろそろ下行くか」
そう呟き、部屋の窓の方を見る。
いつの間にか外は黄金色から真っ黒な闇に染まっていた。
――――――――――――――
キースが階段を降りると途端に香しい匂いが立ち込めた。どうやら夕食ができたらしい。
彼が台所に足を踏み入れると母はテーブルに夕食を並べている。そのテーブルには父がパソコンと向かい合っていた。
父はプログラム関係の仕事に就いているが、内容がハードらしい。家に帰ってからもこうやって仕事をしている事が多い。
そして―
「お兄ちゃん!」
突然、真横から黒い人影が彼にぶつかってきた。いきなりの衝撃にキースは倒れそうになる。
「つっ!あぶねぇだろ。ミシェル」
彼は自分にぶつかってきた者に睨みを効かせるが当の本人は気にしていないようで微笑んでいる。
年は彼より4つ下くらい。ふわふわしたクリーム色の髪を揺らし、依然として微笑みを浮かべながら彼女、ミシェルは言った。
「お兄ちゃん、ご飯だよ!」
「分かってるって。だから降りてきたんだろ」
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