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かすれ声で笑う藤原を他所に、あたしはスッと横に移動して帰ろうと足を踏み出した。
「ま、理由はともあれ…無かったことにはしないから」
「え…?
わ、…ふ、藤原」
藤原の左手があたしの右手をぎゅっと握る。
温かくて、男子特有の大きくてゴツゴツした手…。
藤原の親指が、あたしの手の甲をゆっくりとなぞる。
「だから覚えといて、俺のキス」
囁いた低い声は、耳にはっきりと届いた。
意味を良いほうに捉えてしまうあたしは単純で子供で……すぐ心臓の音が速くなる。
「わ…分かったら…、手を離してください…」
「一緒に帰ろ」
「い、一緒に?」
「ん」
「やだ…っ」
「はい、お前に拒否権なし」
藤原は手を繋いだまま階段を下り始めた。
なにこれ…っ。
「こんな強引な帰り方あるかいっ」
「うん、家族愛」
「絶対言葉の使い方間違ってるから…」

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