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7時30分――本来ならばこの時間に来ているはずだ。
けれど、もちろん来ない。
小学2年生からの大親友、渡部巧は交通事故によって死んでしまった。
渡部を引いたトラックの運転手はこの道30年のベテランだったらしい。
警察の事情聴取に対して運転手はおとぎ話のようなことを語っていたらしいが……。
そんなことはどうでもいい。あいつがそれで生き返るわけではない。
そして、僕は不思議なことにその事件にに対して憎しみも悲しみも何も感じていなかった。
まるで僕が殺したかのような気持ちだった。
ブーッ ブーッ
携帯が鳴った。見ると、デジタル時計が8時を指している。
僕は考えていたことをとりあえずしまいこみ、家を後にした。
***
学校に着くと、誰も僕に話しかけない。
あいつが死んでから、まだ1週間足らず。みんな気を使ってくれているんだろう。
「元気出せって、あんま泣いってっと、あいつも成仏できねーぞ」
冗談交じりで唯一声をかけてきたのは、クラスの中心的人物である星野竣介だ。
イケメンで頭もよく、誰にでも優しいというのが女子の受けで、実際は裏で後輩から金をせびっている下
種野郎だ。
僕はその一言に聞き耳を立てずに無視をした。
来年高2になる僕は、余計なもめごとをなくす術をすでに身につけていた。
後ろで女子がくすくす笑っている声がしたが特に気にしていない。
ただ、また、少しだけ学校がつまんなくなった。
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