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今回は衝撃も何もなかった
起きてみると、僕は学校にいた。
日づけを見てみると6月12日、午後1時。
ちょうど昼ごはんを食べたあたりだった。
自分の姿が確認できないので、とりあえずトイレに走った。
すると、中にいる男子が顔を真っ赤にしてこっちを見ていた。
その顔があまりに恥ずかしそうだったので、僕はトイレを出た。
そして、よくよく見ると僕は女子になっていた。
今更こんなことでは驚かなくなったが、ようやく、中の男子が恥ずかしがっていた理由が分かった。
僕は教室に戻って、体をうつぶせの姿勢にして机で顔を隠していた。
僕が変わった女子は、元僕の隣の筒井真紀子だった。
一言でいえば、「静かで何もしゃべらないおしとやかな女の子」だ。
つまり、僕は今から極力しゃべってはいけないということだ。
隣を見るとそこには全然違う男子がいた。
あまり気に留めなかったが、後からこれはとんでもないことだった。
***
筒井の家は想像を超えていた。
おしとやかで静かな女子だけだったが、新たなことばを付け足す必要があった。
まず、中に入ると、数えきれないくらいの執事が待ち構えていた。
奥のほうへ行くと、大きなシャンデリアが堂々とつるされていて、螺旋階段で、大理石で、エレベーターで、言っていくときりがない。
とにかくあいつは「静かで何もしゃべらないおしとやかなお嬢さん」だ!!
居心地が悪くなった僕はトイレへと逃げ込んだ。
お金持ちはいいけど、こんなんじゃ身が持たねえよ。
僕は、なんのためらいもなくボタンを押した。
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