18章

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台所で立ったまま、椿の顔を見つめた。不思議そうに私の様子を伺う椿。 背中に変な冷や汗が流れる。 仕事について聞くだけなのに 『今日、持って帰ってきた段ボールてさ…その…大学で何かあったの?』 椿をマトモに見れず、目線を下に向けた。聞けたけど見れない。 しかし、反応が気になる。 「今日は勘が冴えているのね。話があるからそこに座って」 リビングのテーブルに誘導され、椿と向かい合わせになった。バスローブ姿がしっかりと視界に入る。 真面目な話なのに変なことを考えてしまう… こんな自分が恥ずかしい。 アナログ時計の秒心音が響く。 軽いため息を吐いた椿は、ゆっくりと口を開いた。 「実は大学の研究室を辞めてきたの。母の会社に就職することが決まって…」 『えっ?母の会社?』 大学を辞めた=大学で椿に会えない。 母の会社=社長令嬢? 目を見開くことしか出来ない。 大学で何かあった事は予測出来ていたけど、辞めたことまで考えつかなかった。 「大学に入る前から、母と約束していたのよ。色々な経験を積んでから、会社で勤めることをね」 『じゃあ、行く行くは社長になる予定?』 社長令嬢なんだから社長になる可能性が高い。 そしたら、もっともっと遠い存在になってしまう…一緒にいることも… 色々と考えてしまい、椿に対しての返答が出来ない。 椿は立ち上がり、私の横に来て、静かに抱き締めてくれた。 バスローブからはシャンプーの良い匂いが香る。
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