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椿姫がわざと、私に話を振ってきた。
怒りすら、感じられないくらいの脱力感。
「べべつに!レポートのことを考えていただけー。涼子さんってハーフ?とても綺麗な顔つきだから。」
平常心を保って、涼子という女性に話しかけた。爽やか笑顔で私の方を向いて、答えてくれた。
「えぇ、私は母が北欧人、父が日本人です。この店のマスターは父方の祖父。母の血が多く出てしまって、時々英語で話しかけられることがあって困ります」
クスッと静かに笑う顔がまた綺麗だわ。
「涼子は10歳まで北欧に住んでいたんですよ。英語は話せるのですが、日本語がどうも苦手で。だから、今日は椿さんと陽子さんと話して接客を勉強しなさい。二人ともよろしいですか?」
なんという提供するのマスター!!
だけど、焦った気持ちを表に出さずに笑顔で了解した。
「私はぜひ良いわよー。椿姫は?」
「私もいいわよ」
二人とも、快く引き受けた。
椿姫には内心見破られているに違いない。
焦る気持ちが増していく。
涼子は失礼しますと言って、私の隣に静かに座った。
ドキッ! うるさい心臓…。
爽やかな匂いが広がっていく。
この匂いが頭にクラッと来た。
ダメ、平常心!
「大丈夫ですか?顔色が優れない様子で」
ハッと我に返ると、目の前に爽やか笑顔が!!
「うわぁ!大丈夫よー。レポート疲れだからさ、ここのイチゴタルトを食べれば大丈夫ー。」
「大丈夫よ。この人は美…」
椿姫が何か余計なことを言い出そうとしたので、手で口を覆った。
何をするという、険しい表情で私を見る椿姫。
多分、椿姫は「美人好き」と言おうとしたはず。
涼子にそういう事は聞かれたくない。
「なら、良いんですが…。二人とも私と同じ大学と聞いて、どの学部ですか?」
「私は大田 椿、国際学部。」
そういえば、自己紹介してなかった
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