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「私、何か気に触ること言いましか?」
申し訳なさそうな顔で私達を見てくる。私は咄嗟に大丈夫というサインを出した。
「大丈夫だよー。医学部なんて思うより凄くないからさ。それより涼子ちゃんって呼んでいい?」
とりあえず、呼び名から責めていこう。恋する高校生みたい…。
爽やか笑顔で口を開く。
「ちゃん付けより呼び捨てで構いませんよ。今まで、呼び捨てでしか呼ばれたことがなくて」
呼び捨て、なんという昇格かしら。
心が暖かくなっていくのが分かる。
椿姫はニヤリっと笑い、コーヒーカップを持ち上げて啜る。
「涼子…」
呼び捨てで呼ぶと、「はい」と爽やか笑顔で返事をしてくれる。
ノックアウト……。
自分の中で何かがバキッと割れる音がした。厚い壁にヒビが入った感じ。
「今日はありがとうございます。涼子が大変お世話になりました。」
マスターは深く頭を下げる。
私達は「いえいえ」と言いながら、店の外へ出ていく。
「今日はとても勉強になりました。二人とも、とても素敵方々で尊敬します。」
涼子もマスターと同様に頭を深く下げる。
そんな涼子には私は恥ずかしながらも、言葉をかける。
「貴女がbarで働くなら、私は毎日来る勢いよ。大丈夫だからさー、大学でも会ったら気軽に声をかけてね」
何気ない言葉だったと思う。椿姫が後ろから涼子に声をかける。
「私もよ。陽子と違って口下手だけど涼子なら大歓迎」
「それってどういう意味よ?私がベラベラ話す印象みたいなー」
「あら、事実を言ったまでよ」
「うっ、椿姫ってやはり掴みづらい」
私と椿姫のやり取りに、マスターと涼子が小さく笑う。
「お二人さんは名コンビですね。何か縁があるんでしょう。」
落ち着いた声のトーンでまとめようとするマスター。
「いやよー」
「無理」
二人揃って拒否する言葉が飛び交う
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