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店を後にした数分後。
私は椿姫と並んで静かに帰っている。
きっと、椿姫にはバレているから敢えて言いたくない。
夏の夜風が涼しくて、さっきの熱い気持ちが丁度良く中和される。
沈黙を破ったのは…
「涼子っていう子、本当にいい子みたいね。中性的な雰囲気で爽やかね」
椿姫だった。
確かに中性的な雰囲気である。
腰が柔らかいというか、優しさで溢れている感じ。
「しかも、外見がハーフで美人さん~。頭も良さそうだからモテるわね~」
気がないような態度をとるが、椿姫には通じない。
椿姫は足を止めて、私をじっーと見つめる。
夏の空はキラキラしており、月夜の灯りが椿姫の整った綺麗な顔を照らす。
椿姫は妖艶という言葉がよく似合うわ。
「自分の気持ちに素直になりなさい」
その言葉が胸に響いた。
本当の自分を見せたくない…。
一瞬、動揺したがいつもの表情に戻した。
「何の事かなー?私は常に本能のままに生きてわよー。一人の人間に対して、真剣になるなんてバカらしい…」
ため息をついて、椿姫の顔を見直す。椿姫はゆっくりと口を開く。
「貴女は私の恋愛に真剣に答えてくれたから、私も真剣に言ったのよ。涼子が気になるなら、頑張れば良い。今までの自分に甘えないで、新しい自分と戦うべきよ。」
「勝手なことばかり言わないでくれるー?私が年下なんかを好きに……」
今日会ったばかりの涼子のことが…。
あり得ない。
「私は別に[好き]っていうワードを出していないんだけど?わけに素直ねぇ」
「椿姫……。策士なんだから。冗談通じないけど、頭が良いのは認めるー」
椿姫にしてやられた。
頭が良いっていうのも、困り者ね。
二人で近くの公園に入り、ベンチに座って話し出す。
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