15章

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鬼のような顔をしたマスターが居た。 マママスター!! ニッコリマスターじゃない!! カウンター席に居た椿姫は涼子を連れて後ろに下がっていた。 用意周到すぎる。 マスターは男どもに一喝した後、扉の方を指差した。男どもは怒りの頂点に達している様子。 「あんなんだよ!」 「それが客に対する態度かよ!」 色々な暴言が吐かれる。 その言葉を無視するようにマスターは携帯を取り出して、どこかへ電話している。 「もしもし、警察ですか?男三人組が店の営業妨害を…」 もしかして、警察に電話しているの!?私はその場に立ちすぐことしか出来ない。 マスターは静かに電話を切り、男どもを笑顔で見つめる。 「あと15分でつく予定です。どうします?このまま逃げるか?捕まるか?」 男どもの表情が青くなっていき、近くにあったカバンを急いでとる。 慌てて扉の方へ行き、振り返って暴言を吐く。 「こんな店、二度と来るか!」 店中に響き渡る。 他のお客さんは少し怯えていたが、マスターがすぐに雰囲気を穏やかにする。 「皆様、申し訳ありませんでした。安心してください、警察への電話は嘘ですから。今日は初日でもありますから、サービスいたします!」 深くお詫びをいれて頭を下げた。 なんか、格好いい!! みとれていると、頭を軽く叩かれた。 「いたっ…」 振り返ると、椿姫が険しい表情で立っていた。私の耳元まで顔を近づけて口を開く。 「しっかりしなさいよ」 うっ…。潔く出てたのに何も役に立たなかった。 軽くため息をついて、顔をあげると… 「Wie geht es Ihnen?」 「えっ?」 心配そうな顔で涼子が見てくる。 その前に発音発音が……涼子自身は気づいていない。私は少し笑って、涼子の肩に手を置く。 「In Ordnung.Sie in Ordnung?」 『大丈夫。あなたは大丈夫?』 ドイツ語で返したら、涼子は思わず小さく笑った。医学部で良かったと思った瞬間である。 「ドイツ語のが似合うわねー。私は大丈夫だからさ。てか、椿姫が何気に美味しいところを持っていくんだからー」 私と涼子を面白がるように見ている椿姫。腕を組んで、必死に笑いを堪えている。 「涼子は陽子に借りが出来たわね」 「借りというより恩人ですよ。陽子さんには本当に感謝です!何かご馳走させてください」
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