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鬼のような顔をしたマスターが居た。
マママスター!!
ニッコリマスターじゃない!!
カウンター席に居た椿姫は涼子を連れて後ろに下がっていた。
用意周到すぎる。
マスターは男どもに一喝した後、扉の方を指差した。男どもは怒りの頂点に達している様子。
「あんなんだよ!」
「それが客に対する態度かよ!」
色々な暴言が吐かれる。
その言葉を無視するようにマスターは携帯を取り出して、どこかへ電話している。
「もしもし、警察ですか?男三人組が店の営業妨害を…」
もしかして、警察に電話しているの!?私はその場に立ちすぐことしか出来ない。
マスターは静かに電話を切り、男どもを笑顔で見つめる。
「あと15分でつく予定です。どうします?このまま逃げるか?捕まるか?」
男どもの表情が青くなっていき、近くにあったカバンを急いでとる。
慌てて扉の方へ行き、振り返って暴言を吐く。
「こんな店、二度と来るか!」
店中に響き渡る。
他のお客さんは少し怯えていたが、マスターがすぐに雰囲気を穏やかにする。
「皆様、申し訳ありませんでした。安心してください、警察への電話は嘘ですから。今日は初日でもありますから、サービスいたします!」
深くお詫びをいれて頭を下げた。
なんか、格好いい!!
みとれていると、頭を軽く叩かれた。
「いたっ…」
振り返ると、椿姫が険しい表情で立っていた。私の耳元まで顔を近づけて口を開く。
「しっかりしなさいよ」
うっ…。潔く出てたのに何も役に立たなかった。
軽くため息をついて、顔をあげると…
「Wie geht es Ihnen?」
「えっ?」
心配そうな顔で涼子が見てくる。
その前に発音発音が……涼子自身は気づいていない。私は少し笑って、涼子の肩に手を置く。
「In Ordnung.Sie in Ordnung?」
『大丈夫。あなたは大丈夫?』
ドイツ語で返したら、涼子は思わず小さく笑った。医学部で良かったと思った瞬間である。
「ドイツ語のが似合うわねー。私は大丈夫だからさ。てか、椿姫が何気に美味しいところを持っていくんだからー」
私と涼子を面白がるように見ている椿姫。腕を組んで、必死に笑いを堪えている。
「涼子は陽子に借りが出来たわね」
「借りというより恩人ですよ。陽子さんには本当に感謝です!何かご馳走させてください」
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