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私とは逆バージョン。
マスターはさらに言葉を続けた。
「それから、離婚することになり、アンナさんは日本に残って涼子を女手一つで育てました。私は何かできないかと思い、社会経験のためにバイトとして雇いました。孫バカなんですよ」
涼子のお母さんって逞しい。
普通、夫に浮気された挙げ句、離婚したのに日本に残るなんて。
私なら無理。
「マスターは愛情と責任、二つの気持ちから涼子を見守っているのね。同じ人間として尊敬します」
椿姫はマスターを尊敬の眼差しで見つめる。いや~、守備範囲が広いこと。
「涼子はしっかりしているから大丈夫じゃない?」
「外見はそう見えますが、案外抜けてますよ。」
懐かしい思い出を思い返すような顔で小さい笑うマスター。
お祖父様、孫娘さんを下さいなんて言えない。
三人で話していると、涼子が静かに戻ってきた。バーテンダー姿が眩しい。
「マスター、お客様も落ち着いてきましたので看板を戻しましょうか?」
祖父と言っても、仕事上では雇い主だから丁寧な敬語で了解を得ている。
マスターはニッコリ笑顔で答える。
「お願いします。今日は大変だったからな、今後について会議を開こう」
確かに初日から大変だったわね。
会議を開くなら、私達も…
「なら、私達はこれで失礼します。私と陽子も学校がありますので」
椿姫!また美味しいところを…
私は恨めしそうな顔で椿姫を見る。
余裕の笑みで私を見てくる椿姫。
「すみません、追い出す形になってしまって…今日のお勘定はいりません」
「大丈夫だよー。じゃあ、今日はご馳走さまでした。」
マスターのオーラに負けた。
私は少し肩の力が抜けた表情をしていると、居心地の良い声が聞こえた
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