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心臓がうるさい、変な汗が出てくる。
平常心を装い、涼子に笑顔を向ける。
「レポートだよー。だからbarにも行けなかったの。そっちは講義?」
「Ja」
ドイツ語で話す習慣が抜けないのね。さっきも普通に「なにしてるのですか?」ってドイツ語で聞いてくるくらいだから。
「そっか~…」
気持ちが焦る分、話題が思い浮かばない。
一体どうしたのだろう…こんなこと有り得ない。
暖かい手が頭に触れる感覚が伝わる。
「良かったら、食事にいきませんか?この前のお礼も兼ねて」
それってチャンス!!
身体中が熱くなり、すぐに返事をした。
「いいわね。ちょうど涼子とはゆっくり話したかったの。私が知ってる店がいい?」
「もちろんです。じゃあ、いきましょう」
涼子は芝生に、散らかっている参考書や資料を片付けまとめている。
片付けている姿も画になる。
「いいわよー。そんなことにしなくても」
我にかえって、涼子のそばに近寄る。
爽やか笑顔で私の荷物を静かに渡す。
「このくらいさせて下さい。この前は本当に助かったんですから。」
「あれは…その…勝手に身体が動いただけよ。気にしないで」
まともに涼子の顔が見れない。
私はスタスタと歩き出して、ランチの場所へと向かう。
多分、不思議な顔をしているはず。見れる余裕がない。
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