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「陽子さん、歩くの早いですね」
私の歩幅に合わせてくれる涼子。
優しい。
「そうー?涼子のが足長いんだから、もっと早そう。」
「バレました?」
うっ!イタズラそうに笑う顔が眩しい。二人で冗談のやりとりをしながらランチの場所に到着。
メニューを決めて、お互いに沈黙を守っている。涼子は爽やか笑顔で、テラスから見える景色を眺める。
綺麗な横顔に見とれて、軽くため息をついた。
「ため息をついていたら、幸せが逃げますよ?」
いきなり、落ち着いた声が聞こえたため、身体がビクッとなった。
焦りを隠しながら、口を開く。
「人間観察が好きなのー?涼子って、本当に色々な面を見ているわね。接客業がお似合いですこと」
少し皮肉交じりの言葉をかけてしまう。そんな私に涼子は笑顔で答える。
「人間観察は好きですよ。色々な人を見て、色々なことを吸収したい。だから、あそこで働くのもアリかなと」
誠実な姿勢。私には無いモノ。
心の中で何かが渦巻いている。だから、私は涼子に…
ぼぅーと考えていると、料理が運ばれてくる。落ち着いた様子で次々と料理を口に運ぶ。
今までの私って何だったのだろう。
誰かと居るのが怖かった?
縛れるのが嫌だった?
違う…
一人が嫌だった。
でも、誰かを引き留める勇気がない。
色々と考えていると、頭がクラクラしてきた。息苦しい…血の気がなくなる感じ…
「陽子さん!!」
涼子の声が遠くに感じる。あれっ?
私は…。意識が遠くなっていく。
身体中が重い。私、どうなった?
瞼をゆっくり開けると、白い天井が見えた。
「ここは…」
上体を起こして、腕に何か繋がられている感覚。これは点滴?
もしかして…心臓が一瞬羽上がった。
扉がガラッと開いた。
「陽子さん、大丈夫ですか?」
心配そうな表情で涼子が近づいてくる。綺麗な顔が台無し。
「大丈夫…って!!私、どうしたの!?」
「貧血みたいなモノで倒れたんですよ。レポートに追われてあまり寝てなかったみたいで…」
そうか、寝不足で倒れたのか。病室のベッドに再び横になる。
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