15章

20/25
前へ
/242ページ
次へ
「陽子さん、歩くの早いですね」 私の歩幅に合わせてくれる涼子。 優しい。 「そうー?涼子のが足長いんだから、もっと早そう。」 「バレました?」 うっ!イタズラそうに笑う顔が眩しい。二人で冗談のやりとりをしながらランチの場所に到着。 メニューを決めて、お互いに沈黙を守っている。涼子は爽やか笑顔で、テラスから見える景色を眺める。 綺麗な横顔に見とれて、軽くため息をついた。 「ため息をついていたら、幸せが逃げますよ?」 いきなり、落ち着いた声が聞こえたため、身体がビクッとなった。 焦りを隠しながら、口を開く。 「人間観察が好きなのー?涼子って、本当に色々な面を見ているわね。接客業がお似合いですこと」 少し皮肉交じりの言葉をかけてしまう。そんな私に涼子は笑顔で答える。 「人間観察は好きですよ。色々な人を見て、色々なことを吸収したい。だから、あそこで働くのもアリかなと」 誠実な姿勢。私には無いモノ。 心の中で何かが渦巻いている。だから、私は涼子に… ぼぅーと考えていると、料理が運ばれてくる。落ち着いた様子で次々と料理を口に運ぶ。 今までの私って何だったのだろう。 誰かと居るのが怖かった? 縛れるのが嫌だった? 違う… 一人が嫌だった。 でも、誰かを引き留める勇気がない。 色々と考えていると、頭がクラクラしてきた。息苦しい…血の気がなくなる感じ… 「陽子さん!!」 涼子の声が遠くに感じる。あれっ? 私は…。意識が遠くなっていく。 身体中が重い。私、どうなった? 瞼をゆっくり開けると、白い天井が見えた。 「ここは…」 上体を起こして、腕に何か繋がられている感覚。これは点滴? もしかして…心臓が一瞬羽上がった。 扉がガラッと開いた。 「陽子さん、大丈夫ですか?」 心配そうな表情で涼子が近づいてくる。綺麗な顔が台無し。 「大丈夫…って!!私、どうしたの!?」 「貧血みたいなモノで倒れたんですよ。レポートに追われてあまり寝てなかったみたいで…」 そうか、寝不足で倒れたのか。病室のベッドに再び横になる。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

313人が本棚に入れています
本棚に追加